頭脳労働

頭脳労働

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能見ショウコにとっては、戦闘とは頭脳労働である。


指揮、通信が得意というわけではない、いや実際得意ではあるのだが…




相手の体格、筋力、精神的傾向を予測


五感、特に言葉の与える心理効果を把握し、自身の身体能力を頭の中でシミュレート、最適を意識して行動する。




行動の無駄を排除し最少の体力消耗で効率的に体を動かす。


体躯を鍛える必要はない、把握しているステータスから変わって、想像通りに動かせなくなってしまうことの方が面倒だ。


見計らい、愛用銃『ニュートラルカラー』による銃撃、怯んだ隙に距離を詰める。

バヨネットは取り付けていないが、銃剣の要領で振るう。



一閃、銃床の一撃、二閃。

普段の彼女からは想像の付かない鋭い槍捌き


たまらず相手は距離を離す、しかしショウコの追撃は無い。


疑問を持つよりも早く、ショウコが左手に持った“ソレ”を見せびらかす様にゆっくりとふるった。


『銃の弾倉』咄嗟に手元の銃に視線を向け、ポーチに手を伸ばす。


しかし、銃にはキチンとマガジンは装着されており、ポーチから無くなっているモノもない。


“ブラフ……っ!!”


視線を戻せば、視界には目前に広がる弾倉

咄嗟に左手で庇い、叩き落とすと目の前には能見ショウコがいた。

……投げた弾倉とほぼ同時に此方に迫る、対した速さだ。

狙いもそのまま、引き金を絞るよりも早く、ショウコの脚が銃口を捉え弾丸が明後日の方向に翔んで行く。


そして、先程私が払いのけた弾倉を素早く拾い、見惚れるような滑らかな動きで装填。


突き穿つ様に繰り出された銃口はそのまま至近距離、防弾ベストの隙間から脇腹へと一切のブレなく撃ち込まれた。

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